「うっせーなぁ。何なんだよ」

「ヒマになった!?」

「とりあえず、聞いてやるから用件を言え」

「やった! あのさ、明日何の日か知ってる?」

「知らね。もう帰っていいか?」


鞄を肩にかけて去ろうとする矢野くんに、栄田くんが本気の涙目ですがりつく。


「待って待って待って! なんと、明日は我らが担任、コモリンの誕生日なんだって! ひゅー! やったね拍手~!」


クラスメイトがはらはらと見守る中、栄田くんは矢野くんの気を引こうと必死にがんばっている。

それはもう健気なほどで、見ているだけで泣けてきた。


ただしそう思うのは事情を知っているわたしたちだけで、矢野くんはますますどうでもよさげな雰囲気を強める。


「へー。で?」

「冷たいなその反応! だからさ、明日俺らでサプライズ誕生日パーティーしてやろうぜ!」

「サプライズぅ?」