けれどすぐに何か思い当たったようににやりとした笑みを浮かべた。


「ああ、なるほど。矢野とデートってわけだ?」

「う、うん」

「デートならしょうがない。他当たるから、千奈は気にせず楽しんでね!」

「ごめんね由香ちゃん。ありがとう」


トンと軽く背中を押され、鞄を持って彼の待つドアへと向かう。

少し振り返った自分の席には、笑顔の由香ちゃんと手を振る茅乃がいて、照れくさくなりながらわたしも笑って手を振り返した。


「お待たせ、矢野くん」


ドアにもたれかかっていた矢野くんが、身体を起こして首を傾ける。


「早く行こーぜ。映画始まっちまう」

「うん! 急ごう」


肩を並べ、駆け足で廊下を行く。

途中で手をとられ、ぐんと力強く引かれて驚いたけど、矢野くんが楽しそうだからわたしも笑った。



わたしたちの放課後は今日も、笑顔で溢れている。






【END】