日常の体温、特別の鼓動



入院病棟のワークスペースは、普段はリハビリに使われる。

今月だけは、週に2回の午後、ぼくたちが借りている。

ぼくたちというのは、慰問公演の演劇チームだ。

ぼくたちは来月、この大学附属病院を皮切りに、近隣のいくつかの病院で朗読劇の公演を予定している。


ぼくはヘルパーだ。

体が不自由な利用者さんが快適に過ごせるように、身の回りのことを手伝う。

代行サービス業、だと思ってる。

自分で運転する代わりにタクシーを使うようなものだ。


今のぼくの仕事場はこの病院だから、ワークスペースに到着するのは、いつも誰よりも早い。

というか、今日は思いっ切り早すぎた。

1件、仕事がキャンセルになったせいだ。

利用者さんが熱を出して寝込んで、入浴介助の仕事が消えた。