日常の体温、特別の鼓動



初めて彼女の声を聞いたとき、演じているとは感じなかった。

彼女の口から放たれた言葉は、作り物だと思えない。

ああすごい才能だな、と悔しくなった。

ぼくなんかじゃ太刀打ちできない。


嫉妬のような尊敬のような気持ちが、やがて本物の憧れに育っていった。

萌えとか、そんな次元じゃなくなった。

この魂のかよった声の持ち主に会ってみたい。

そう願うようになった。


そして、出会ってしまった。


同じ舞台に立てるとわかって、小躍りした。

ダブル主演の恋人役だと知って、眠れないほど緊張した。

最初の顔合わせの日は、胸が高鳴って仕方なかった。