日常の体温、特別の鼓動



「開けてもいい?」

「ダメです」

「どうして?」

「……マカロン、食べたいから。すごくおいしい」


ああ、どうしよう?

きみが好きだ。

今すぐ抱きしめたいくらい好きだ。

ぼくの胸に耳を寄せて、高鳴る鼓動を聞いてほしい。


箱の中のマカロンをつまんで、きみの口元に運んで、自分の口元にも運ぶ。

座り心地が少し悪そうなきみを抱えて、クッションの上にそっと下ろす。

きみは真っ赤になるけど、ぼくはそ知らぬふりをする。


一緒に演技を創り上げるのも、介助の技術を使いながらエスコートするのも、ぼくだからできる。

ぼくにとって、これは日常。

きみにとっても日常でしょう?

この距離は、ほんとにありふれたことに過ぎないんだ。


いつか応えてもらえないかな?

急がなくていい。

ぼくは、ずっと待ってるから。