日常の体温、特別の鼓動



握力の弱い彼女の代わりに、マカロンの箱を開けた。

よかった、割れてない。

一口で消えるサイズのココア色とピンク色が、3つずつ。


「わぁ……!」


彼女が吐息みたいな歓声をあげた。

目がキラキラしている。


「マカロンは卵白を使ってて軽いし、ガナッシュも薄くしてある。たまには、こういうのも口にしていいんじゃないかな?」


彼女は、胃腸が強いとは言えない。

カロリーも気になるらしい。

だから、本当は好きなお菓子を、なかなか食べない。


「……せっかくだから、いただきます」

「じゃあ、はい」


ピンク色をつまんで口元に差し出したら、そっぽを向かれてしまった。


「自分で食べますっ」

「ああ、ごめん」