さよならから始まる

『それなら良かった。俺は元気だよ』


涙で視界が滲んだ。


私が元気なことを、良かったって。


私の質問に、元気だよって。


答えてくれた。


私の言葉に、あなたが返事をくれた。


そのことが、どうしようもなく嬉しくて。


大袈裟なことかもしれないけれど、本当に、泣けるくらい嬉しかった。


するとまたケータイはメールの着信を知らせた。


驚いてメールを開くと、送り主はあなただった。


『あの日から、何か変わったこととかあった?』


あの日、という単語が目に入ってきた瞬間、どくんと心臓は大きく鳴った。


あの日。


それは、あなたとの関係が終わった日。


あなたにさよならと言われた日だ。


『何も変わらないよ』


何も、何一つ、変わらない。


全部、全部、あの日のままだ。


あの日あなたの言葉にはりつけにされたまま、あなたを苦しめたその罪に苛まれたまま、私はずっと、生きている。


『そっか』


あなたの返信はたったそれだけだった。


3文字。

たった、3文字。

ただの相槌だ。