さよならから始まる


家に帰ると自分の部屋で制服を着替えて、ぼすんとベッドに寝転んだ。


バーミリオンとライラックの交わる空と灰色のプラットホームの間にいたあなたの姿。


悔しいくらいに、悲しいくらいに、鮮明に思い出せてしまう。


思いだしては、顔を枕に押し付ける。


必死に忘れようとした。逃れようとした。


私のみにくい抵抗だ。


どんなに抗ったって、あなたから逃げることなどできないのに。


『さよなら』


あの時の、あなたの真っ直ぐな瞳。

悲しい決意に満ちた、あの表情。


…ほら、こんなにも鮮明に、少しも色褪せることなく思いだしてしまう。


辛いよ。


苦しいよ。


叫んでしまいたくなるほど渦巻いているこの感情を、私はどうしたらいいの。


ぎゅっと目を閉じた、その時だった。


ケータイが鳴った。


顔を枕に押し付けたまま手探りでケータイを手繰り寄せる。


そしてケータイの画面を見れば、どうやらメールが届いたらしかった。


その送り主を見た瞬間、私は驚きのあまり起き上がった。