さよならから始まる

やがて電車の速度は落ちて、駅に止まる。


車掌さんが連呼する駅名は、私の最寄り駅。


あなたの、最寄り駅。


勢いよく空気が抜ける音とともにドアが開いて、数人の乗客が電車を降りる。


降りていくのは、ほとんどが私と同じ高校の生徒。毎日同じ電車にのって登下校するから、名前は知らないけど顔は覚えた。


電車を降りた人は余所見もせずに、ただまっすぐホームから改札口へと向かって歩いていく。


私は足を止めて、辺りを見渡した。


ばちり。


効果音をつけるなら、そんな音。


目が、あった。


あなたと、目があった。


普段、きっとお互いが知らない他人のふりをするのに、今日に限って。


いけない。

目を、合わせてはいけない。

今すぐに、逸らさなきゃ。


そんな考えが思考回路を勢いよく回るのに、視線は少しも動かなかった。


まるで吸い込まれるように、そのまっすぐな瞳を見ていた。


だめだ、目をあわせるな、と、脳はうるさいほど警告しているのに。