さよならから始まる

あなたを傷つけた私が、あなたを想う、なんて。


そんなこと、許されるはずないのに。


許されない、そう思っているのに。


もう終わったこと、そう分かっているのに。


そう思えば思うほど、


そう考えれば考えるほど、


「すき」が膨らんでいくの。


それを無視することも、捨てることもできないの。


呆れるくらい。


もうどうにもならないくらい。


私はそっとあなたから目を逸らして、移り変わる窓の外を眺めた。


切ないくらいのバーミリオンとライラックが混じり合う、夜と夕方の中間色の空。


その真ん中で、満月でも三日月でもない中途半端に欠けた白い月は浮かぶ。


その下に広がるのは雄大で穏やかで、何も言わない海。


空の色を映して、波を寄せる。


すごく、きれいだ。


その美しさに見惚れながら、耳にはガタンゴトンと無機質で遠慮のない電車の音が届く。


音と共に車体は大きく揺れて、ふらついた足に力を入れながら掴んでいた座席の横の棒をぎゅっと握りなおす。


その時、ちらりと視線はあなたを捉えた。



…あぁ。

笑ってしまいたくなる、本当に。