さよならから始まる

おかしいよね。


あなたは笑う。


「ナツとの関係を終わらせたのは、俺なのに」


ただただ、あなたの言っていることが信じられなくて。


あなたが紡ぐ言の葉に耳を澄ませた。


「ナツ、俺はもう一度、ナツとやり直したい」


やさしい言葉とやさしい笑顔。


あの頃見たことなかった、その表情。


「ほんとに、いいの?」


震えたのは、私の言葉だった。


だって、私はあなたを傷つけた。


あなたを苦しめた。


それなのに、好きなんて。


もう一度やり直そうなんて。


そんなやさしい言葉を言ってもらえる資格が、価値が、わたしにはないのに。


「俺はナツがいいんだよ」


あなたは笑う。


「後悔するかもしれない」


「それはその時すればいいでしょ」


てか、絶対しないから。


ニカッと白い歯を見せて、笑う。


快活な笑顔。


あなたの笑顔。