さよならから始まる



次の日、いつもと同じ時間の電車に乗って帰宅する。


私がいつも帰るときに乗る電車は人が少ない。


朝と大違いだ。


座席はガラガラで、数人しか乗っていない。


私はいつものように立ったまま、ぼうっと窓の外を見ていた。


雲一つない空に太陽が傾く。


ゆったりした海は、夕日を浴びてキラキラ光を反射している。


海だけじゃない。


屋根も、道も、木々も、全部。

太陽を浴びて、キラキラ輝いている。


なんだか少し嬉しくなって、頬が緩む。


けれど太陽の光の眩しさに耐えきれなくなり、目を細めて車内に視線を移した。


その時、だった。


…また。


また、目が合った。


あなたと、目が合った。


勘違いじゃない。


あなたが、私を見ている。


私は視線を動かせなかった。


動かせなかったし、動かしたくなかった。




…叶うなら、どうか、このまま。


どうか、あなたの視界に私が映っているままで。