【澄音side】
だいぶ慣れたキッチンで、目玉焼きとベーコンを焼く。
あとは、お決まりのトースト。
ささっと朝食を済ませて、制服の袖に手を通す。
…今日で最後の制服。
アパートの鍵を閉めて外に出ると、ふわっと春の香りが鼻を掠めた。
見上げると、真っ青の空とヒラヒラと舞う桜。
まさに、卒業式日和って感じ‼︎
そして今日、約束通りなら海翔さんが迎えに来てくれる…。
少し緊張しちゃうな……。
徒歩10分で着く、思い出がたっぷり詰まった校舎。
一番最初に教室で声を掛けられたのは、少し髪が伸びた龍也。
「久し振りだな。澄音」
「龍也‼︎久し振り‼︎もう卒業だね〜」
「早いよな〜。…彼氏と幸せになれよ。フラれたら俺んとこ来い‼︎」
「ありがとう。でも、フラれません‼︎」
「ははっ‼︎それが一番良いや‼︎」
龍也は大切な男友達。
いつも優しくて良いヤツだもん。