【澄音side】
マンションの室内は、オレンジ色に染まり日が傾く夕方。
玄関先に置かれた大きなスーツケースと、ギターケースを背負った背中。
その背中がくるっと振り返った。
「じゃあー……行って来るな」
「行ってらっしゃい…」
「…そんな顔すんなよ〜。たった3ヶ月の我慢だ。8月にはコッチ帰るし」
たった3ヶ月、か……。
あたしにとってはすごく長いよ…。
今日から、海翔さんはワールドツアーのためアメリカに飛び立つ。
あたしのことも連れてってくれないかな…。
「ほら、笑ってろ‼︎お前、こっちの方が似合うよ」
むにっとあたしの頬を摘まんだ。
そして、ぎゅっと抱きしめられる。
「絶対寂しい思いさせる。だけど、俺のこと待っててな」
「…うん。待ってる。思いっ切りライブ楽しんでね‼︎成功させてね‼︎」
「ははっ‼︎任せろ‼︎」
大好きな人の大好きな笑顔。
ガチャっと家のドアが閉まった。
行っちゃった……。