「あなたのママは体が弱くてね、それでも生まれてきてくれた命だからこの子を産みたいって必死に訴えたのよ」

「なら、なんでおじいちゃんとかが迎えに来てくれなかったの?」

「心の母親に両親はいなかった。孤児院で育ったんだ」

「パパとママは心のママと話し合って今後心のママの体が持たなくなったら私達があなたを育てるって約束したの」

急に双子が両片っぽずつ手を握った。
その時泣いてるのに気づいた。

「心の母親が他界しなくても俺達はお前を育てる手伝いをするよ」

「突然こんなこと言われてびっくりする気持ちも分かるのよ。ただ、これがホントのことなの」

「なんで…今日…言ったの?」

「これは3人で決めた約束だからだ。早く言っても戸惑うだけ高校生になった歳の誕生日に言うって決めたんだよ」

「中学の時に言っても状況が分からないし高校生になってからの方が暴れたりしないかなって思ったの」

「…そう。部屋に戻っていい?」

「ええ。でも、パパとママは心のこと愛してるから」

「ありがとうパパ、ママ」

プレゼントを抱えて部屋に戻った。
あんなに楽しかったのに天国から地獄に引き落とされた気分だった。

本当の両親じゃない。
産みの親は死んだ?無責任に逃げた?
何それ……パパとママが今日言ったのはもぉあたしはこといらないって思ったからだよね。
たぶん、その事を言わないために言った嘘なんだ。
中学生で一人暮らしは無理だけど高校生なら出来るから。
本当の子供だけを育てたいんでしょ。
自分達が産んだ双子を…
始めっからあたしは愛されて無かったんだ……

そう思ってるうちに涙が止めどなく溢れて初めて声を上げて泣いた。
たぶん、みんなに聞こえてる。


いつの間にか泣き止むとノック音と共にママが入ってきた。
まだ4月で夜は冷えるからかテーブルにホットココアを置いた。

「温かいうちの飲んでね。飲み終わったらそのまま置いてていいからね」

ママはそう言うと扉に向かって歩いた。
扉には心配そうにするパパと双子がいた。

ココアを飲むとホッとしたのか疲れ果てて寝てしまった。


「眩しい...」

電気を付けたまま眠っていたらしく電気の光で目を覚ました。
無理やり体を起こし時間を確認した。

「なんだ...まだ5時だ」

家族がまだ寝ている時間。昨日お風呂に入れなかったから、誰にも会わないうちに入って学校に行ってしまおう。

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いつもよりも早く学校に着き、昨日のことや昔のことを思い出した。

あたしと双子は10歳差。その間パパやママはほんとに愛してくれていたと思う。他人のあたしを...。これからもっと双子に手がかかることも分かっている。

「あぁ、もぉあたしがあの家に居ちゃいけないんだ」

誰もいない教室。ただあたしの独り言だけが虚しく響いた。

「あの家にとってあたしは邪魔なんだ」

そう思うだちどんどん涙が溢れてきた。あたしが知らなかったあたしの過去。あたしは実の父親に捨てられて、母親は死別なんて。

悠太にも迷惑をかけることになる。このことを知られたら、悠太はあたしから離れてしまう。

考えれば考えるほどどんどん嫌な方向に思考がいってしまう。

(ねぇ、悠太。あたしはあなたに相応しくない。今日あなたとのことを終わりにするね)