風の噂、とは恐ろしい。
ひどく気紛れな柏木財閥の旦那、義臣の新しい妻は廓の出身、と町中にすぐに知れ渡った。
珠喜は長い睫毛を伏せて、愛しいあげはに文を書いた。内容は嘘ばかりであるが、あげはには心配をさせたくなかった。
姐さんは幸せにしているのだと、いつも綴った。
歳の離れた夫となった義臣は、けして条件の悪い男ではない。色狂いではあるものの、彼は美しい珠喜に夢中になっていた。
時々、義子の貞臣は珠喜を見て笑う。しばらくしての事だ。彼が男色であると知ったのは。
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