籠姫奇譚





「あげは、お湯へ行きましょう?」


ずっと眠らずに居たのか、明け方、あげはは目を腫らしていた。

赤い瞼を擦ろうとするので、慌て止める。


「傷がついてしまうわよ」


珠喜はあげはの手をとると、そのまま湯屋へ向かった。

着物を脱いだとき、己の胸元に散った花弁に気付く。


「昨日の客……野暮なお人……」


珠喜はすぐに手拭いで覆い隠し、浴場へ入った。

痛いほど肌を擦る。

いずれ赤く染まる白い肌。


痛みを感じれば感じるほど、自分が不浄から解き放たれるような気がして。