籠姫奇譚






灯りのともった薄暗い部屋の中、珠喜の乱れた髪が、布団に広がる。

それは天女の絵巻物を眺めているような錯覚。


「あぁ、愛しい珠喜、お前はどうしたら、その声で啼いてくれる?」


今宵の男は、野暮だ。あまりに必死なものだから、少し鬱陶しい。

そんな苛立ちを隠すため、相手の胸に顔を押し付けた。


目を瞑り、脳裏では愛しい貞臣を浮かべ、不快さに堪える。


「珠喜……珠喜……」


名前を呼ばれれば、現実に引き戻されてしまう。

お願い、呼ばないで。

その声ではないの。

私が求めるのは──…