籠姫奇譚



振り返れば、見慣れた金色の髪。やさしい笑顔。


「瑪瑙……さん……」


「やっぱり蝶子ちゃん!……遙は一緒じゃないの?」


彼との距離に、急に不安になる。

言ってみれば、『知り合い』という関係に過ぎないのだから。


「きょ、今日は遙さんには黙って来たんです……」


沈黙がとても長く感じる。



「ふふ………あはははは!」


沈黙を破り、急に瑪瑙が笑い始めたので余計に不安になった。


「そりゃぁいいや。あいつの我侭に愛想でも尽きた?」


またいつもの冗談口調だ。

「そんなことはっ!私は……」


そこまで言いかけて気付く。

貴方に会いに来た、なんて言える筈がない。

うつむく蝶子に、瑪瑙が優しく問いかける。


「ね、祭り見物に来たってワケじゃないなら、ちょっと付き合って欲しいんだけど……」


瑪瑙は蝶子に微笑んだ。

なんだか恥ずかしくなり、目を逸らしてしまうが、蝶子は嬉しさを隠せず、頬を染めた。