籠姫奇譚


今日は祭りか何かがあるのか、いつも以上に町は人で賑わっていた。

人ごみをすり抜け、瑪瑙を捜す。

いつもは目立つ姿が、なかなか見つからない。

あまり体力のない蝶子は、そうしているうちに人混みに酔い、疲れてしまった。


「はぁ……はぁ……」


見つけられない自分に苛立って、逢えないと思うと哀しくて。

いつのまにか蝶子の目からは涙が滲んでいた。


「う………」


涙を拭おうとした瞬間、腕を掴まれる。



「蝶子ちゃん?」



それは聞き覚えのある、そして逢いたかった人の声。