籠姫奇譚


雨が続いていた空は、青く澄んでいた。

瑪瑙の姿を捜すが、すでに見えなくなっていた。

でもまだ、近くに居るはず。


(もう1度、逢えるのなら、逢って話がしたい)


そう思った。

何故だかわからないが、彼にとても惹かれている自分がいる。


出逢った時から。


「少し、少しだけ……」


蝶子は天道寺の邸を見上げると、走り出した。