籠姫奇譚


遙はといえば、今日もまた仕事場に篭っている。

彼がいない屋敷の中はとても静かで、退屈だ。

そう、とても。


蝶子は手元に転がっているビー玉を手にすると、ゆっくりと光に翳した。

きらきら輝く、眩しい碧。

あの人の瞳は、いつも光って、希望に満ちて。


「なんて──綺麗」


しばらく魅入っていたが、遠くで聞こえた声に現実に引き戻される。


「はーるかー」


瑪瑙の声だ。
今しがた考えていた人の。