籠姫奇譚


「彼と、何を話していたの?」


遙の冷たい指先が、髪を撫でる。


「……名を、訊かれただけです」


「ふぅん……」


蝶子の髪を弄びながら、遙は満足気に笑った。


遙の目は何を捉えているのかわからず、無表情な硝子玉のように見えた。


暫くして、蝶子の髪を離すと、遙はまた仕事に戻った。