ふいに桜田が立ち上がってフェンスに寄りかかると校庭に目を向けた。




「あ…」




彼女が何かを見つけたように声をあげたので僕も桜田の隣にたって校庭を見下ろした。






香水だろうか。彼女から風にのってほのかに薔薇の香りがした。






校庭では僕をいじめている野田明人と高野秀夫と住谷重信が他のいじめられっ子にボールをあてて楽しんでいる。


いじめられているのは3組の村田良樹だ。






学年にいじめられっ子は僕1人じゃない。



学校は常にスクールカーストがあり、だいたい人気者で行動が目立ったり見た目が良かったりの1軍。



当たり障りのない安定した2軍。



そして学校中から嫌われ成績も悪ければ運動もできない、いじめられっ子の3軍。





に無言のルールとして置かれていた。






「ほらね。見えるでしょ?」


「…」






ボールを散々にぶつけられ村田は鼻から血を流していた。




そんな村田を桜田はいつも通りの微笑で眺める様はとても美しく冷酷だった。