そして桜田は少し離れて置いてあった自分のバックからサンドイッチ・菓子パン・クッキーを取り出す。





サンドイッチと菓子パンを僕に渡してクッキーを桜田が口にする。






「…食べないの?」





ぼーっと桜田を見つめている僕に声をかけてくる彼女。





「いいの?」


「お弁当私のせいだから。」





あぁ…そういうことか。





もういじめられ慣れていて、お弁当がぐちゃぐちゃにされるのなんて日常茶飯事だったから…。




有り難くサンドイッチと菓子パンを食していると桜田が話しかけてきた。






「長野くんっていじめられてるの?」


「…」


「いつも見えるよ。ここから」





屋上からは校庭が見渡せる。


昼休みはたいてい外で、僕は的と称してボールをぶつけられていた。





「いつも見ているの?」


「見ているんじゃなくて見えるの」






彼女は不思議な言い方をした。


いつも顔に浮かべている微笑は美しすぎて僕にはとても遠い存在に見えた。


なのに彼女と僕は今、同じ場所で2人きりでお昼を食べていることがとても変だと感じた。






「さ、相良晴彦と、付き合ってるの?」





先ほど、熱烈な口づけを目撃してしまったためかつい言葉が出てしまった。



しかも、焦って声まで裏返った。



そんな僕を桜田はいつもの微笑で見つめて答えた。





「どうして?そう思ったの?」


「え?…だって、君はさっき」


「キスしてたから?」


「っ!……そ…ぅ…」





わざと言葉を濁していたのに桜田涼子は堂々と言葉を発したので僕の語尾が小さくなる。





「付き合ってないよ」


「そう…なんだ」





付き合ってないのにキスするんだ。