力なく目を閉じていた桜田がうっすら反応した。




「桜田!大丈夫だからっ!僕が絶対助けるから!」





刺された箇所をぎゅっと手で抑えても抑えても流血は止まらなかった。





止まれよ!止まってくれよ!





「…長野くん…、私のこと、は…もう…いいから…」




か細い声で、桜田が薄く笑う。




「なんでそんなことっ!こんな時まで笑うなよ!」




僕の手が服が暖かい血で染まっていってもなお止まらなかった。





「冬樹は…守れなかったけれど…長野くんは…守れたから…」





そして、また微笑んだ。





「なんで僕を庇うんだよ…。僕は…僕は…」




ついに涙が出た。




言いたいことがたくさんあるのに言葉が出てこない。





「長野くん…ほんと、…泣き虫ね……。」




桜田はふふっと、軽く笑うけれどだいぶ無理をしているのが見て取れる。



「ほら、泣かないで…」




最後の力を込めて手を伸ばすと僕の涙を拭った。




その手をしっかりと握りしめる。





「これで…やっと、冬樹のところに…いける。」





「桜田っ!桜田、行かないで!僕を1人にしないで!」