「……偉大なる、か。呆れた」


溜め息混じりに笑うあたしを見て、堀北さんもプウーッと吹き出した。


「何? どうして堀北さんが笑うの?」


「いや、ごめん。須藤、変わったなと思って」


「変わりましたか、あたし」


「そりゃあもう。先輩と付き合ってからよく笑うようになった。表情豊かになったっていうかね」


「そうですか?」


「うん。上京同時は全然笑わなかったし。怖いくらいだった」


そうだったのかもしれない。


第三者の堀北さんにそう見えていたのだから、そうなのだろう。


「だってもう笑うしかないです。何をするにも唐突で。自由過ぎて怒る気にもなれません」


「そうだろうな」


「でしょう?」


「分かる気がするよ、須藤の気持ち」


クスクス笑いながら写真を見つめて、ふと思った。


今なら、海斗に会っても大丈夫だ。


きっと普通に笑える。


そう思う。


それは潤一の存在があるからだった。


「で」


コーヒーを啜りながら堀北さんが聞いてきた。


「決めたの? 返事」


「はい」


便箋と写真を封筒にしまって、堀北さんに返しながらあたしは微笑んだ。