恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「自分自身、変わり者だなって分かってたけど。結局、惚れた女の前じゃ僕もただの男だったってこと」


冗談なのか真剣なのかいまいち読めなくて、判別できない口調だったし。


でも、いま思えば、やっぱり何かいつもとは明らかに違っていたのかもしれない。


「大切なひとができたら守りたいものが増えて、臆病になったんだよ」


だから、あたしはいつものように笑いとばすことができなかったのかもしれない。


「お土産、何がいい?」


その笑顔はどこか不安げで心細そうで、寂しそうに見えた。


「要らない」


あたしはそっと目を反らして、潤一を抱き締めて眠った。


「無事に帰って来てくれたら、それでいい」


翌朝、目を覚ますと潤一はいなかった。


リビングにもトイレにも、どこにもいなかった。


スーツケースと共に姿を消していた。


リビングのテーブルに置き手紙を残して。




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陽妃 へ
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カンボジアの前に行きたい場所
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ができたので行きます
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帰ったら肉じゃがお願いします
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行って来ます
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潤一
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急に気が変わったらしい。