恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

その夜、ベッドの中で潤一があたしの頬に触れながらぽつりと呟いた。


「雪」


もちろん、この時期に雪なんて降らない。


「なに言ってるの。もうすぐ6月だよ。これから夏なのに」


あたしは笑いながら潤一の腕の中に潜り込んだ。


「違うよ。僕が言ってるのは陽妃のこと」


「あたし?」


顔を上げると、潤一はやわらかく微笑んで、あたしの額にそっと唇を押し当てた。


「初めて会った時に思ったんだ。白くて雪みたいな女だなって」


「ああ。肌のこと。母譲りなの。日に焼けにくくて」


「どうりで」


潤一があたしを抱きしめながら笑う。


「でも苦手なんだ。冬も雪も」


「どうして? 寒くて冷たいから?」


「それもあるけど」


「けど?」


潤一はあたしの手に触れ、指を絡ませながら苦笑いする。


「溶けちゃうだろ」


潤一は今までに見せたことのない表情をしていた。


「大切に持っていようとしても溶けちゃうだろ、雪って」


陽妃を失うのが嫌なだけだよ。


と、潤一は笑った。


いつもと変わった様子はなかったと思う。