恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

桜色の便箋3枚に及ぶ、長い手紙だった。


そっか。


あれからもう10年も経ってしまったんだ。


海斗は本当にお医者さんになったんだ。


夢を叶えたんだ。


葵ちゃんと……この先の未来を歩んでいくんだ。


……そっか。


じゃあ、やっぱりもう、あたしたちの恋に奇跡は起きないんだ。


もう、本当に。


ふたりの結婚が正式に決まれば、おばあはあの手紙を捨てるだろう。


約束通り。


そうなれば、あのガジュマルの木の根元で、あたしと海斗の約束は眠り続けることになる。


あたしたちの恋はあの島の片隅で、蛍のような淡い光と一緒に永遠に眠りに就くんだ。


二度と掘り起こされることなく、土に還っていくんだ。


クリアブルー色のまま。


永遠に。


やっと、10年背負い続けてきた荷物を、今度は本当に下ろすことができるような気がする。


今度こそ、本当に。


――サヨナラ、海斗


その日、あたしはとても短い返事を書いて送った。



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美波ちゃん。
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私は今、幸せです。
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でも、神様はどこまで意地悪なのだろう。