恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「すぐ帰って来るよ」


そのひと言に、あたしは笑ってしまった。


潤一の“すぐ”とか“ちょっと”ほど当てにならないものはない。


「すぐって今度は何年後?」


「やーすごいなー。さすが陽妃。お見通しか」


「だいたい予想つく」


「実はフランスに行くついでにトルコのイスタンブールにも行く予定」


「はいはい。気を付けて」


でも、潤一は意外にも早く帰って来た。


年が明ける前に日本を離れ、年が明けて間もなくの帰国だった。


帰国するや否や、また日本を離れると潤一が言い出した。


何か生き急いでいるかのようなその様子に、さすがのあたしも呆れ果ててしまった。


本当にもう笑う他なかった。


「フランス、モンサンミッシェル。トルコ、イスタンブール。今度はどこ?」


「イタリアのアマルフィか、エジプトのギザ3大ピラミッドとスフィンク――」


「もういい」


分かった分かった、とあたしは大笑いしながら頷いた。


本当にいつまで経っても少年みたいな人だと思った。


この人から写真や旅を取り上げたらどうなるのか想像すると、やめろなんて口が裂けても言えなかったし、あたし自身、潤一にそういうことは望んでいなかった。


「どこに行っても、いつ帰って来てもいいけど」


ただ、潤一に望むことはいつもひとつだけだった。