恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「やーまいったなあ。かなり勇気出したんだけどなあ。だめだったか」


ブツブツこぼしながら、潤一がご飯をかきこむ。


「あちこち周りながら真剣に考えてたんだ。ちゃんとしようと思って。いつまでも曖昧な関係でいるのは失礼だろ。きちんとしようと思ってさ」


ああ、と思う。


この人は一見いい加減で、言うこともテキトーで。


言葉も仕草もどれが本気でどれが冗談なのか分からない。


行き当たりばったりの人生を歩んでいるように見えるし。


でも、部屋は常に小綺麗できちんと整理整頓されていて。


それはきっと、覚悟を決めた上で旅に出るからであって。


箸の持ち方も正しくて。


何より、潤一の写真を見ればそれは明らかだった。


彼の撮る風景にはブレがない。


潤一は誠実な人だった。


「潤一」


「んー?」


あたしは箸を置き、改まって頭を下げた。


「よろしくお願いします」


「ああ、うん。……え……ええっ!」


すると、潤一も箸を置いて、椅子の上で正座をしてくすぐったそうに頭を下げて笑った。


「こちらこそ。よろしくお願いします」


きっかけは出逢い頭に衝突する小さな事故みたいなものだった。


順番もまるで裏腹でデタラメで、インスピレーションと体からのプロローグ。


そのわりに気付けば一緒にいる時間が増えて。