恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「それ、ほめてるの、貶してるの」


「ほめてんの」


「本当に?」


「本当。陽妃の肉じゃががいちばんうまい。世界一」


「なんか……逆に胡散臭い」


大袈裟なんだよ、と笑いとばしたあたしを、潤一は箸を休めてじーっと見つめてきた。


「何?」


首を傾げると、潤一は「うん……」と歯切れ悪い返事をして、残り半分になった肉じゃがを見ながら言った。


「これ。陽妃の肉じゃが。食うたび思うんだよね」


「何を?」


「あと何回くらい食えるのかな、って」


ドキ、とした。


「なに言ってんの」


「次、日本を離れたらもう食えないかもなーって考えながら食ってんだよ。こう見えても」


潤一はけろっと笑って言ったけど、その目は笑っていなかった。


どこか自信なさげで不安そうに見えた。


「ツアー旅行みたいに添乗員がいるわけじゃないし。ジャーナリストとか戦場カメラマンほどじゃないけど。こう見えても命がけだったりするから。僕がやってることって」


その先のことは口にしなかったけど、潤一が言いたいことはその表情と雰囲気から伝わって来たし、理解できた。


彼のしていることは決して安全を保障されているわけじゃない。


それは分かっている。


スリに遭ったり、これまで何度も危険な目に遭ったことを聞かされていたし。


額や背中に切り傷を作って帰って来ることもある。