恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「次はいつ日本を離れるの?」


「しばらくはこっちにいるよ。結構いいのが撮れたんだ。幾つか出版社に持ち込んでみようかと思って」


「そうなんだ」


永遠さえ感じるほどの安心感に包まれて、あたしは久し振りに深い眠りに就いた。


でも、潤一は大嘘つきで。


そのわずか2週間後にはまた突としていなくなった。


ちょっと行ってきます、そんな置き手紙を残して。


再び潤一が帰国したのは更に半年後の冬の始まりで、帰って来た矢先、また予告なしにどこかへ行ったのは年が明けて春のことだった。


あたしは27歳に、潤一は32歳になっていた。


「はあーっ? またどっか行っちゃったんですかあっ?」


店の休憩室に小春の声がビリビリ響く。


「この前帰って来たばかりじゃないですか!」


「うん。でもまた行っちゃった」


クスクス笑いながら答えたあたしを見て、小春が「呆れた」とがっくり肩を落とした。


「行くんだったら何かひと言くらい。ねえ」


「いいの。いつものことだから」


「でも! いいんですか? 陽妃さんはこのままで」


友達以上恋人未満の曖昧な関係のあたしたちに、小春はやきもきしているようだった。


「榎本さんも榎本さんですけど。陽妃さんも陽妃さんですよ」


「あたし?」


「だって。報告もなしに突然旅に出て、いつ帰って来るか分からない人を待ち続けるなんて。私には考えられません」