恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「ひと言、お願いします」


「……」


あたしが無反応を示すと、潤一は「あれー?」と情けない口調をしてわざとらしく肩をすくめた。


「感動のコメント期待してたんだけど」


なんでだろう。


デリカシーの欠片もないんだから。


感動も何もあったもんじゃない。


あたしは不覚にも泣きそうになりながら、潤一を睨んだ。


「どこ行ってたのっ!」


声が上擦る。


「えっ。葉書送ったんだけど届いてない? エクアドルの――」


「なんでっ……なんでなのっ」


なんでこの人はこんなに飄々として平然としていられるんだろう。


なんであたしはこんなに振り回されているんだろう。


なんであたしだけ。


泣きそうになってるんだろう。


「……陽妃……あの……え」


涙ぐむあたしに気付いたのか、潤一がぎょっと目を見開く。


「えーっ! えええーっ!」


ウソだろー、と潤一の声が外までつつ抜けて行く。


「なんで泣くの!」


アメージング! 、そう言って、潤一はあたしを力いっぱい抱き締めた。


アメージングなのはあたしの方だった。


26歳にもなって、子供みたいにわあっと泣いてしまったのだから。


潤一の腕の中で、頭のネジが外れたように泣きじゃくった。