恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

須藤陽妃を知ってる、あの海斗なの?

うわあぁぁん、と小さな子供のように泣き出してしまったあたしを、ぎゅうっと抱きすくめ、海斗はやっぱり静かに笑った。
まるで、与那星のないだ水面のように。


「でーじ、待たせてしまったね。遅くなってごめん」


やっぱり海斗だ。
あたしに知ってる……大好きな海斗だ。

「島で、オバァが待っとるんだしさぁ……みーんなが待っとる」

うん。

「帰ぇろう、陽妃。島に。帰ぇろう」

返事はもう涙で言葉にならなかった。
海斗への想いがあふれてあふれて、あふれてどうにもできなかった。

「陽妃、島でたくさんのカフーが待っとるからさぁ。やさからさ……一緒に帰ぇろう」


うん。


泣き腫らした顔で頷いたあたしを笑った後、海斗はそっとあたしの額にキスをして、言った。


「必ず幸せにします。でーじでーじ幸せにします。だからさ、陽妃」




おれの嫁さんになってくれんかね。




その日、天使の羽根のような雪が一晩中舞い降りて、札幌の街はウエディングドレスのように純白色に染まった。