恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

夢だったの。ずーっと。
もう一度大好きな海斗と、島に帰ること。

ただ泣いてばかりで、口を真一文字に結び、うんともすんとも言わず、うなずくわけでも首を縦に振るわけでもないあたしに、海斗は困ったようにはにかんだ。


「ごめんね、陽妃ぃ」


海斗は手であたしの頭に降り積もった雪を優しく払いながら続けた。

「10年以上も待たせてしまったね。ごめんね」

海斗はダウンジャケットの右ポケットに手を突っ込むと、それを取り出した。そして、右手をあたしの顔の前にずいっと出し、ゆっくりと手をひらき微笑んだ。

「迎えに来ました」

かじかんで寒さに震える彼の手の中でぽうっと淡く灯ったのは、透明で青い、今にも消え入りそうな淡い光。

「……これっ」

18歳の春に島を出る時、浜のガジュマルの木の根元にブイに入れて埋めた、ちゅら玉のストラップ。

「約束通り迎えに来ちゃん」

ちゅら玉を乗せた右手を差し出す海斗。


「うそ……」


まだ光ってるの?

あたしたちの恋は、まだこうして光を失わずにいてくれたの?

「信じらんな――」

ストラップに触れようとした瞬間、あたしの手ごとものすごく強烈な引力に導かれ、


「つかまえた。もう離さん」


耳元で海斗の声がして、あたしの体は彼の腕の中にあって、強く抱きすくめられていた。

「離さん。もう絶対に離さんよ」


夢、みたいだ。
ずっと、こうして欲しかったの。
海斗。

「ばかだねぇ、陽妃。オバァに手紙なんか託しよってさぁ。オバァが忘れてしまっとったら大変だったよ! 年寄りなんだからさあーもー」


クスクス笑う彼の胸にぎゅうっと顔をうずめると、なつかしい匂いがした。
おひさまの暖かい香りと、与那星浜の潮風の匂い。

「ずっと、ずっと待ってたの、あたし」

なつかしい大好きな匂いを胸いっぱいに吸い込んでみたら、目の奥が熱くなって、再び涙があふれて止まらなくなってしまった。

「ほんとに……海斗なの?」