恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

海斗。

あなたへのひと言めは何がいいだろう。
ごめんなさい。
つらい思いをさせてしまったね。
私のせいだね。

ううん。

大好きだった。
ずっと、大好きだった。
愛してる。


ううん。それも違う。
そんな言葉じゃ全然足りない。

会いたかった。

違う違う。

うん。

でも、そうだ。
どうしても訊きたいことが、ひとつだけあるの。

あのね、海斗、まだ間に合うのならあたしを――。



あたしはコートの右ポケットに手を突っ込んで便箋をぎゅっと握った。











❁ ❁ ❁ ❁ ❁

突然、オバァの家の玄関が開いて、そこに立ち尽くしとったのはニィニィでした。
まるで荒れ狂った海を何日もかけて泳いで来たかのようにびしょぬれで、砂だらけのニィニィでした。

そん時のニィニィはなんとも説明しがたい不思議な表情をしとりました。
泣き腫らしたような、笑うとるような、苦しそうな、でもでーじ嬉しくてたまらんとでも言いたげな。
そんな顔。

それでさ、どんだけ急いで走ってきたのか、両肩を上下させて、びしょぬれ砂まみれのニィニィのひと言めには、美波もオバァも驚かずにはおれんでした。


「ところで、オバァや、カフーのウシラシあったかね」


ニィニィが記憶喪失になってから久し振りに聞いたニィニィ独特の島の方言でした。
唖然とする美波とオバァを前に、左小脇に抱えとったなぜか半分に割れとる汚い苔がついとるようなブイを足元に置くと、

「見てみよーさい、あいつ、あんなとこに隠しよーる。でーじ困ったやつさぁーもおー」

砂だらけの顔に白い歯を輝かせて「これさ、これ!」とニィニィがそれを見せてくれました。

ニィニィは右手におさまるほどの小さな小箱を持っとって「これさ」と上蓋をあけて見せてくれました。

中には淡く、青く輝く蛍がおりました。そして、メッセージカードも一緒に入っておりました。


「困ったやつさあー、陽妃はさあ」

そう言って、ニィニィはぽろぽろと涙を流しておりました。
ちゅら玉のストラップをきつうーく握りしめて。