まるで何かに憑りつかれたかのように仕事とカウンセリングにのめり込み始めたのです。

ニィニィの夢だった与那星島に診療所を開設する話が進み始めたのもその頃で、仕事は順調そのものでした。
でも、カウンセリングの方は思うように結果が出ず、やきもきする日々が続いたのです。
別に焦ってないよ、大丈夫。
ニィニィはそう言っとったし一切顔にも出さんかったけど、美波たちには想像もつかんほど苦しんでおったんだと思います。
記憶を取り戻したい。
だけど、頑張れば頑張るほどうまくいかんし空回り。
ニィニィ、焦っとったんだと思います。
思い出せんのに、心の片隅にはいつもネェネェがおって、離れんかったんだと思います。
ただ記憶の一部分が抜け落ちとるだけで、ニィニィの体というか、細胞がネェネェをしっかり記憶しとったんじゃないかと美波は思えてなりませんでした。

ニィニィの本能的なものが、ネェネェが自分ではない他の誰かと結婚してしまう前に、どうにかして思い出そうと必死にもがき苦しんでおるように見えてなりませんでした。
でも、それを隠すように必要以上に明るくふるまうニィニィは正直見ていれんかったんです。
だから、美波もオバァも決断したんです。
ネェネェがオバァに託して行ったあの手紙を、ニィニィに見せることにしました。
手紙を読めばきっと、ううん、必ず今よりもっとずっとニィニィは苦しむだろうし、焦るだろうし、葛藤する。
そんなことは明らかに分かっとったけど。
でも、手紙を見せることにしたんです。