一度、陽妃さんに会いたい。
いろんな話をしてみたい、聞いてみたい。とニィニィが口にするようになりました。

ニィニィがネェネェに会ってどうするのさ、記憶を失ったまま会ったところでなんなのさ、ネェネェには大切なひとがおるんだよ。
と美波や葵ちゃんがどんなに言っても、ニィニィは頑として陽妃さんに会うと言ってききませんでした。
どうしてもネェネェに会いたいと。

その頃にはもう葵ちゃんは分かっとったと思います。
ニィニィの中で確実に変化が起こっとることを。
そして、自分たちの関係が終わろうとしとることも。
あんなに毎日一緒におって仲良しだったのに。
距離を置き始めたのはニィニィじゃなくて、葵ちゃんの方からでした。

確かにあれは仕事での東京行きだったけど、一緒に行ったはずなのに、葵ちゃんだけが1日早くひとりで沖縄に帰って来て、泣いていました。

もうこれ以上、自分のウソで海斗を苦しめたくないって。
今まで本当にごめんなさいって。
精一杯抵抗したしあがいてみたけど、おばあの言う通りだった。
やっぱり運命には逆らえんみたいさ。
そう言って、10年以上抱え込んでおった何かを吐き出すように、葵ちゃんは泣いていました。

そして、東京でひとりネェネェに会ったニィニィは、まるで初恋に敗れた中学生みたいな情けない顔で帰って来たのです。
陽妃さん、今度結婚するんだって、と。
その1週間後、ニィニィと葵ちゃんは別れました。

葵ちゃんは臨床留学のためアメリカ行きを決意するし。
それからにニィニィは人が変わったように、異様なまでに過去の自分を知りたがるようになりました。