「このテーブル席使って」


と、宏子さんはあたしの手元を指差してくすくす笑った。


「読むんでないの? それ。手紙」


「あ……」


あたしはにっこり微笑みを返しながら、頷いた。









窓の外はもうすっかり暗くなり、未だ羽毛のような羽根雪が舞い落ちる。


あたしは封筒を開き、二つ折りにされた便箋を取り出した。


「あっ」


その時、数枚重ねて二つ折りにされた便箋の間からひらりと床に落ちたそれを、慌てて拾い上げ、


「……え……な、んで」


息が止まるかと思った。


「この、写真……」


いや、きっとその一瞬、息は止まっていたと思う。


――ごめん。良い画がだったから思わず1枚


――基本的に人物を撮るのは趣味じゃないんだけどねー


東京、青山のユキナヒイラギのショップ前で、純白のドレスに心を奪われていたあの時。


潤一が許可無く勝手に撮った、あたしの写真。


――写真は嘘を付かないから。真実を写すから


なぜ、この写真を美波ちゃんが持っていたのか。


全てはこの長い手紙に綴られていた。


なにもかも、全て。