恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「透明で、青色」


そう言って、あたしは本当に小さく微笑んだ。


「クリアブルー色のひとです」


「クリアブルー?」


と宏子さんがオウム返しで首を傾げる。


あたしはしっかりと頷いた。


「要は透き通ってんのに、青い色ってことだべ? 不思議な例え方するんだなあ」


とシゲさんがケーキをぱふんと頬張る。


「あ、ごめんなさい。分かりにくいですよね」


でも、そうなのだ。


他にどう表現すればいいというにだろう。


「でも、他に例え方が見つからないんです」


あたしはカウンターに頬杖をついて、ほんのわずかの間、目を閉じた。


濁りなんてない純粋な青色なのに、透き通ったあの色。


もう、10年以上も前の遠い記憶なのに。


ああ。


今でも、こんなにも鮮明に蘇ってくる。


あの頃、毎日のように、それが当たり前だったように、見ていた風景が。


強烈な陽射しを跳ね返して。


まるで砂金をばらまいたように、燦然と輝く水面。


白い砂浜。


頬を優しく撫でる、やわらかな風。


風に揺れる木の葉が奏でる静かな音色。


あたしの心を浄化して、そして。


この胸を焦がす、あの声も。


――陽妃ー!


「空よりも青くて。だけど、限りなく透明で。透き通っていて」


あたしはできるだけたっぷりの時間を掛けて、目を開いた。


「不思議な男の子。真っ黒な瞳が綺麗で。真夏でもひんやり冷たい手をしていて。でも、笑顔も仕草も行動も、全てがあたたかくて」


――はぁるぅーひぃー!


「ただ、ただそこに一緒に居るだけで、心が洗われてびっくりするほど、綺麗になっていくの」


――帰ぇたんなぁー!


「だって、彼のまわりにはいつだって静かで清潔な色の風が吹いていたから」


その風はクリアブルー色の風で。


あたしの心を真っ新に浄化してくれたの。