恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

元気かな。


今頃、なにしてるかな。


今日のお昼はなにを食べたのかな。


元気、だよね。


会いたいな。


おばあ。


「素敵だね」


「えっ」


はっとして顔を上げると、宏子さんが目尻にしわを寄せてやわらかく微笑んでいた。


「その言葉。本当に幸せがやって来そう」


カフーアラシミソーリ。


宏子さんは一定のリズムでコーヒー豆を挽きながら、その言葉を繰り返した。


まるで鼻歌で子守唄を奏でるように、やさしく静かな声で。


カフー、か。


あたしは水色の封筒にそっと視線を落とした。


一週間もかけて、美波ちゃんはどんなことを書いたのだろう。


「読まないの? 手紙」


宏子さんに促され、でも、あたしは苦笑いして肩をすくめた。


「うん……なんだか怖くて。読んだら、どうなっちゃうんだろうって、怖いんです。どうしよう。もう少し、後にしようかな」


「そっか。まあ、それも良しだ」


「……うん」


ほどなくして、宏子さんは思い立ったようにケーキを焼き始めた。


「日曜だけとはいえ、カフェのくせにスイーツ系が少ないべ、うちの店」


今度からカフェメニューにメープルシフォンケーキを追加するらしい。


「まずはお試しってことで」


焼き上がったら試食して欲しいのだと宏子さんは言う。


「えー、その大役、あたしでいいの? 役に立てるかな」


「なに言ってんの。人気パンケーキ店の店長さんだべ。陽妃ちゃんは」


「……そうですけど……パンケーキとシフォンケーキじゃ違」


「同じだべ」


バッサリ言い切って、宏子さんは作業に没頭し始めた。


あたしはブレンドをすする。