行って来ます!
そう言って、ふたりは冬晴れの札幌の街に飛び出して行った。
カフーが来る……って……。
首を傾げて、美波ちゃんたちが出て行ったばかりのドアを見つめて突っ立っていると、
「ねえ、陽妃ちゃん」
宏子さんが興味深そうに聞いてきた。
「“カフー”ってなに?」
「あ、ああ。えっと、そうですね。カフーは……」
あたしはカウンター席に戻り、椅子に座って答えた。
「島の方言で“幸せ”とか“いい報せ”って意味です」
「シアワセ? って、ハッピーの幸せ?」
「うん。そう」
こくこく頷いて、コーヒーカップの隣にそっと水色の封筒を置いた。
「幸せとかいい報せ。おばあがよくお祈りしてました。“カフーアラシミソーリ”って」
「へえー。なんか呪文みたいだ」
幸せかあ、と宏子さんはコーヒー豆をガリガリ挽きながら、大粒の瞳をくるりと輝かせた。
カフーアラシミソーリ。
ふと、小さくて丸まったあの背中を思い出す。
珊瑚の石垣で囲まれた、ボロの家。
古ぼけた風鈴がひとつぶら下がっているだけの、風通しの良い縁側。
そこにちょこんと正座してお茶をすする、大好きなおばあの小さな小さな背中。
――ちばりよー、陽妃ぃ
あの日、あたしが東京へ行くと告げた時、初めて見た、頑固で無愛想な人の涙。
胸がシクリと締め付けられる。
そう言って、ふたりは冬晴れの札幌の街に飛び出して行った。
カフーが来る……って……。
首を傾げて、美波ちゃんたちが出て行ったばかりのドアを見つめて突っ立っていると、
「ねえ、陽妃ちゃん」
宏子さんが興味深そうに聞いてきた。
「“カフー”ってなに?」
「あ、ああ。えっと、そうですね。カフーは……」
あたしはカウンター席に戻り、椅子に座って答えた。
「島の方言で“幸せ”とか“いい報せ”って意味です」
「シアワセ? って、ハッピーの幸せ?」
「うん。そう」
こくこく頷いて、コーヒーカップの隣にそっと水色の封筒を置いた。
「幸せとかいい報せ。おばあがよくお祈りしてました。“カフーアラシミソーリ”って」
「へえー。なんか呪文みたいだ」
幸せかあ、と宏子さんはコーヒー豆をガリガリ挽きながら、大粒の瞳をくるりと輝かせた。
カフーアラシミソーリ。
ふと、小さくて丸まったあの背中を思い出す。
珊瑚の石垣で囲まれた、ボロの家。
古ぼけた風鈴がひとつぶら下がっているだけの、風通しの良い縁側。
そこにちょこんと正座してお茶をすする、大好きなおばあの小さな小さな背中。
――ちばりよー、陽妃ぃ
あの日、あたしが東京へ行くと告げた時、初めて見た、頑固で無愛想な人の涙。
胸がシクリと締め付けられる。



