恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

「ポストです。そこのコンビニのとこの」


これ、と封筒を見せると、宏子さんは何かを察したのかやわらかく微笑んだ。


「ついに切り開きますか。未来を」


「はい。切り開くなんて言うと大袈裟かもしれないですけど」


「そんなことないべ」と笑う宏子さんの耳には今夜もロイヤルブルーのピアスが輝いていた。


「ろくな29年じゃなかったけど。来年は30だし。いい節目かなって。30になる前にこれだけは伝えておこうと思って。まあ、最後の賭けってとこです」


「賭けに破れたらどうすんの?」


「その時は胸を張って、島に帰るつもりです。そろそろ、おばあ孝行もしたいから」


「じゃあ、陽妃ちゃんが島に帰る時は審判がくだったってこと意味するんだ」


「はい!」


行って来ます、そう言って、あたしは駆け出した。


もちろん、期待はしていない。


でも、もう一度だけ、待ってみよう。


ただし、今度は漠然と待ちわびた10年とは明らかに違う。


奇跡は起きなくても、想いを伝えたうえで待ってみようと思う。


もう少しだけ。


信じてみよう。


この綺麗な街で。


あなたが生まれた、この街で。


届きますように。


コンビニのポストに封筒を投函した。


見上げた夜空。


降るような夏の星座が夜空に瞬いていた。







ーーーーーーーーーーーーーー
海斗 へ


まだ待っています。

あなたが生まれたこの街で。

カフーを待ちわびています。


          陽妃
ーーーーーーーーーーーーーー