例えもしそうだとしても、売れない写真家に決まってる。


「許可無く撮ったあなたが悪いんでしょ」


自業自得、とつっけんどんに言いフィルムを奪い取り歩き出したあたしを、男が慌てて引き止める。


「あっ! ああ! 待って!」


「何ですか」


「そのフィルム。捨てない方がいいよ」


「何で」


「未来の売れっ子フォトグラファーのフィルムだから」


男はまたへらっと笑って、カメラをひょいと掲げてみせる。


「なんならサインしようか?」


「はあ?」


「将来、かなりのプレミアがつくからね」


呆れた。


どこからその自信が生まれてくるのか不思議でたまらない。


「そういうことは有名になってから言ってください」


「ぐさっ」


男は効果音を言い、腹部を押さえてわざとよろけて、カラカラと笑った。


「痛いとこ突くね。きっついなー。でもキツい性格の女の子嫌いじゃないけど」


軽忽な男の言葉を無視して、あたしはコートのポケットにフィルムを突っ込み歩き出した。


「サヨナラ」