恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

半透明のカクテル。


「白い。これ、なんていうカクテルですか?」


聞くと、親方が教えてくれた。


「ホワイトレディ」


白雪姫にぴったりだべ、なんて。


「優しい色してっけど、ちょっとキツめだよ。ベースがジンだから」


ジン。


胸の奥に忘れようと封じ込めていた痛みがよみがえった。


潤一が好んでいたアルコールだ。


「いただきます」


白いカクテルをひとくち啜る。


ほんのり柑橘系の香りがした。


「うまいっしょ?」


「うん。飲みやすいです。レモン?」


「んだ」


久し振りのアルコールは一杯目からガツンと効いて、親方のカクテルはお世辞抜きに美味しくて。


気付けばいろんな種類のカクテルを飲んで、すっかり酔っ払っていた。


ぐでんぐでんになるほど酔っ払ったのは、久し振りのアルコールのせいだけではなかった。


年明けからまともな休みなく働きづめの日々で、実は疲れ切っていた体と、ボロボロだった精神面。


何よりもおそらく、このお店の独特な雰囲気に酔っ払ってしまったのだ。


「10年間、ずっとずっと待ち続けていたのに。奇跡は起きなかったんです」


与那星島のこと。


海斗のこと。


「青山で会ったの。彼は大ウソつきでテキトーで。でも、誠実で。ノラネコみたいな人だった」


東京でのこと。


潤一のこと。


3時間近くべらべらとしゃべり続けた。


本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。


酔っ払った勢いで、吐き出すように話していた。


宏子さんも親方も、何も言わずにただ聞いてくれていた。


「でね、おばあが言ったの。もう、ずっとずっと前。誰も運命には逆らえないんだよ、って……元気かなあ……おばあ」













頭が痛くて、目を開けた。


「う……え?」


辺りを見渡してはっとした。


ここは……SOUL NOTEだ。


うわあ、やってしまった、と額を押さえる。


しゃべり続けながら、カウンターに突っ伏して寝てしまったらしい。


頬が涙で濡れていた。


店内をぐるりと見渡すと、ソファ席で親方が豪快なイビキをかいて眠っている。


背後でパチ、パチ、と音がして振り向くと宏子さんがキャンドルの明かりの中でテーブルにカードを並べていた。


あれがうわさの……占いだろうか。