恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

そのバーはあたしが越して来たアパートの1階にある。


夜はバーで、日曜日の昼間のみカフェとして営業していた。


ふたりともおそらく40代半ばくらいで、バーテンダーの男性と、女性で切り盛りしているようだ。


バーは毎晩19時30分オープンで、閉店時間はこれといって決まっていないらしい。


18時に仕事を終えてスーパーに寄って帰ると、ちょうど開店準備中の女性がいて、店先に盛り塩をしているのだった。


そして、あたしが「こんばんは」と挨拶すると「お帰り」と妖艶に微笑むのだ。


初めて見掛けた時は幽霊かと思ったほどだった。


彼女を言葉で表すと“妖艶で美しいひと”だ。


向こう先が透けて見えそうな色白の肌。


170センチほどありそうなすらりと長身の彼女は、亜麻色のショートヘアーで、両耳にロイヤルブルー色のピアスをしていた。


優しげで幽かな微笑み方。


「今日もご苦労さん。疲れたっしょ」


ゆったりとした口調で、その外見にミスマッチな北海道訛りが印象的だった。


「いえ。これから開店ですか」


「んだ」


ブルー系のワンピースやスーツを好んで着ている彼女は、不思議なオーラを放っていた。


静かな夜の淵に咲き出た花のように幽艶な美人。


ある日、彼女に聞いてみたことがあった。