恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

『くぬ、ばかもんがぁ。なんてチラ(顔)しよーる。我慢してどうするんか。いいね、陽妃ぃ。泣きたい時やしっかり泣きよーさい』


ああ。


懐かしい。


思い出しちゃうなあ。


10年前、島を出ることを打ち明けた時のこと。


――あたし、卒業したら、島を出るね。東京に行くね


――そうかぁー。ちばりよー、陽妃ぃ


――引き止めないの?


――止めない。オバァが止めてもあんたは行くんだろ


『泣きたい時やー泣かねーといけねーらんどー。くくる(心)に毒さぁ』


――泣きたくなったら、いつでも帰ってきなさい


――そう簡単に帰って来ないよ。泣かないって決めたもん……でも……どうしても泣きたくなったら、その時は帰って来てもいい?


――うん。いつでも帰ぇーって来なさい。オバァ、待ってるよー


美波ちゃんから聞いて、電話をくれたのかもしれない。


だから、きっと、おばあは全部分かっていて。


あたしが今、どんな顔をしているのか分かっていて。


だって、島いちばんのユタのおばあのことだから。


『なんくるないさぁ、陽妃ぃ。誰も何も悪くねーらん。誰も運命にや逆らえんよ』


帰りたいな。


大好きなあの場所に。


『くぬ島や陽妃の居場所さぁ。オバァ、待っとるよくぬ島でさぁ。いつも陽妃のこと思って待ってるよー。いつでも帰ぇーって来よーさい』


ああ……なんだかもう疲れちゃったなあ。