恋蛍~君の見ている風景~【恋蛍 side story】

ちょっと無理したくらいじゃ壊れたりしないから。


人間は体も心もけっこう頑丈でしぶとく出来てるんだから。


でも、もし限界を感じたら倒れたらいい。


その時はちゃんと助けに行くから。


みんなで陽妃を助けに行くから。


「北海道に行きなさい」


返事はしなかった。


無茶苦茶だと思いながら膝を抱き締めた。


「まったく。締め切って陰気くさいったらない」


こんなに良い天気なのに、と立ち上がった律子おばさんが勢い良くカーテンを開けて窓を全開にした。


陽射しが一気に差し込む。


あたしは眩しくて目を細めた。


「どれ。たまにはおばさんの手料理食べさせてやるか」


買い物に行って来るわ、と律子おばさんが部屋を出て行った。


律子おばさんが出て行って間もなくのことだった。


窓からひゅるりとやわらかな風が入って来て、カーテンを膨らませた。


ピロリロ、と通知音が鳴った。


小春か堀北さんだろう。


携帯を確認すると、留守番電話が入っていた。


【098―****―****】


見掛けない電話番号だ。


首を傾げながら音声ガイダンスに従って内容を確認して、あたしは胸がいっぱいになった。